chapter01

【概要】売上と稼働時間データを活用した、プロジェクトの収益性分析ダッシュボード

目次

    本章では、まず全体像として、プロジェクト管理における主要な課題とそれに対応するTableauダッシュボードの解決策を概観します。各課題と解決策の詳細については、続く章で順を追って詳しく解説していきます。

    ■ SI・コンサルティング企業が直面する課題:複雑化するプロジェクト管理

    プロジェクト専門部署では、複数のプロジェクトが同時進行するのが一般的です。各案件の状況を正確に把握するためには、大量の情報を効率的に管理することが求められます。しかし、プロジェクト管理ツールやシステムが分散していると、情報の統合が困難となり、データの可視化が不十分になる傾向があります。その結果、コスト超過や利益率低下の兆候を見逃し、適時の対策が取れないケースが多発しています。

    このような課題に対し、当社はTableauを活用した解決策を提供してきました。具体的には、売上と稼働時間のデータを用いて、プロジェクトの収益性をリアルタイムで分析できるダッシュボードをTableau上に構築しています。このダッシュボードは、売上、利益、利益率を算出し、散布図形式で表示することで、収益性の低いプロジェクトを早期に特定できるよう設計されています。

    ■ Tableauダッシュボードの構成と特徴

    メイン画面(プロジェクト全体の俯瞰と散布図による利益率による分類・可視化)

    ダッシュボードのメイン画面では、各顧客企業の売上と利益率を散布図で可視化しています。この図表により、収益性の低いプロジェクトを即座に識別することが可能です。具体的には、散布図の右上に位置するプロジェクトは売上と利益率がともに高く、左下に位置するプロジェクトは両者とも低いことを示しています。このような視覚化により、問題を抱えるプロジェクトを素早く特定し、より詳細な分析へと進むことができます。

    利益率の基準値は業界や取扱商品によって多様であることを考慮し、柔軟な設定を可能にしています。例えば、当社が属するSI業界では、売上から直接労務費のみを差し引いた利益率(共通部門経費などの間接費は控除しない利益率)について、50%程度が目安とされることがあります。しかし、この数値は業界や商品特性によって大きく異なる可能性があります。

    そこで、ダッシュボード上部に閾値調整機能を実装し、ユーザーが青色と赤色の境界となる利益率を任意に設定できるようにしています。これにより、各企業や部門の実情に即した分析が可能となります。

    詳細ページ

    個別プロジェクトの深掘り
    散布図でプロジェクトを選択して、該当プロジェクトの詳細画面に移動することができます。該当プロジェクトの画面では、売上、利益、利益率の推移をグラフィカルに表示し、プロジェクトの進捗を視覚的に把握できます。加えて、同じダッシュボードの下部にコスト項目の内訳も明示されており、予算超過の発生箇所を即座に特定することが可能です。たとえば、特定期間における人件費の急激な上昇などが確認された場合、迅速に原因を分析し、適切な対応策を講じることができます。

    ■ 導入効果:早期発見と迅速な対応の実現

    本ダッシュボードの実装により、課題を抱えるプロジェクトの早期検知と迅速な対応が可能となりました。具体的には、収益性の低いプロジェクトを即座に識別し、その要因を詳細に分析できます。これにより、最適なリソース配分や効果的なコスト管理策を適時に実施することが可能になり、プロジェクト全体の健全性向上に寄与しています。

    本ダッシュボードは、現場管理者から経営幹部に至るまで、幅広い層から高い評価を獲得しています。これにより、各階層の意思決定者がプロジェクトの進捗状況をリアルタイムで把握し、適時適切な指示を迅速に発信することが可能となりました。その結果、プロジェクトの遅延やコスト超過のリスクを事前に回避し、組織全体のプロジェクト運営を安定させることに成功しています。

    ■ Tableauを活用する技術的メリット

    Tableauの主要な強みは、その優れたデータ可視化の柔軟性と、多様なデータソースの統合能力にあります。当社の開発プロセスでは、SFA、CRM、プロジェクト管理ツール、財務会計システムなど、多岐にわたるデータソースからの情報を、データウェアハウス(DWH)に集約し、包括的なダッシュボードを構築することが一般的です。この手法により、個別のシステムに分散していたデータでさえ、単一のダッシュボード画面上で統合的に把握することが可能となります。

    さらに、Tableauの高度なインタラクティブ分析機能を駆使し、特定のグラフ要素の選択を通じて他のグラフにダイナミックなフィルタリングを適用するカスタマイズを実装しています。具体例として、全体像の把握後に特定の年月や顧客セグメントに焦点を当てる絞り込み機能が挙げられます。この機能により、ユーザーはダッシュボードを介してデータの傾向や因果関係を探索的に分析することが可能となります。従来の静的な分析手法では見出し難かった洞察を導き出すことができ、結果として、より深層的かつ多角的な見識の獲得につながっています。

    ■Tableauダッシュボードがもたらした価値

    Tableauダッシュボードの導入がもたらした主要な価値は、「PDCAサイクルの高速化による迅速な課題解決」と「データ駆動型運営の実現」にあります。組織規模の拡大に伴い不透明化していた現場の実態を、組織の大小に関わらず可視化することが可能となりました。

    これにより、以下の成果が得られました:

    • 問題の早期発見:迅速な状況把握により、潜在的な問題を早期に特定できるようになりました
    • 共通認識の醸成:管理層と現場スタッフが同一のダッシュボードを参照することで、統一された視点での問題認識が可能となりました。
    • 迅速な対策実施:共通の理解に基づき、より速やかな対応策の立案と実行が実現しました。
    • PDCAサイクルの加速:上記の要素が相まって、PDCAサイクルの反復速度が大幅に向上しました。
    • データ駆動型文化の醸成:組織全体にデータに基づく意思決定の文化が浸透しました。
      • 具体的には :
        • データ収集・分析による問題特定プロセスの確立
        • 共通の分析結果に基づく経営判断の実践

    次章では、より具体的な課題や技術的な詳細について掘り下げていきます。どのようにしてプロジェクトの収益性を向上させ、ビジネスの成功を支援したのか、その詳細をお伝えします。

    一覧トップへ戻る