近年、企業におけるデータに基づく経営の重要性が高まる中、財務データの可視化・分析へのニーズが増加しています。本稿では、当社が開発した財務分析ダッシュボードについて、その開発背景から具体的な実装内容までを詳しくご説明いたします。
本ダッシュボードの主要なページは以下の通りです(本稿でご紹介するダッシュボードの数値はすべてテストデータです)。
財務会計システムのデータをTableauを使用して分析する
なぜTableauによる財務データの可視化が必要なのか
近年の財務会計システムには、グラフ作成機能や分析機能が標準搭載されているものも多くございます。このような状況において、Tableauによる財務分析ダッシュボードが必要となるケースについて、当社の事例を基にご説明いたします。
①グループ会社間での財務システム統合
M&Aや事業統合により、複数の財務会計システムが並存している企業グループは多く見られます。このような状況では、グループ全体の数値を一元的に把握することが困難となっています。現状、Excelでデータを集計されている企業様も多く、グループ全体での分析に多大な時間を要しているケースが散見されます。このような課題に対し、Tableauによるデータ統合を実施することで、グループ全体の財務分析を効率的に実施することが可能となります。
②データアクセス権限の柔軟な管理
財務会計システムは、主に経理部門が使用しており、従業員の給与関連情報も含まれているため、他部門からのアクセスが制限されているケースが多く存在します。しかしながら、通常は確認が困難な部門共通費用や、当該費用を控除した営業利益は、経理部門以外のユーザーにとっても、閲覧・分析を通じて高い価値を見出すことができる重要な経営情報です。財務会計システムに代わり、Tableauによる分析ダッシュボードを導入することで、セキュリティを確保しつつ柔軟なアクセス権限の設定が可能となります。
③高度な分析ニーズへの対応
グラフ作成機能や分析機能が標準搭載されているものの、財務会計システムは会計データの正確な管理および決算情報の処理・出力を主目的とするシステムです。BIツールが実現する高度な分析機能を、財務会計システムで実現できているケースは極めて限定的であると考えられます。特に、業務上の要件により注力すべき勘定科目のみを集計・分析するといった、各社固有の分析ニーズに対しては、財務会計システムのみでは十分な対応が困難であるのが現状です。
以下では、本ダッシュボードの各ページについてご説明いたします。
経営サマリーページ – 経営層が確認する指標一覧
経営層向けのサマリーページでは、企業の収益性や財務健全性を示す重要指標を一目で把握できるよう設計しています。
主要な経営指標の説明
①経営指標の概要
画面上段に配置された4つの主要指標について説明します:
- 売上高
- 企業の事業規模を示す最も基本的な指標となります。この指標は、期間内の総売上金額を表示しています。
- 売上高総利益
- 売上高から売上原価を引いた利益を示しています。これは本業での収益力を示す重要な指標となります。
- 今回はコンサルティング事業を例にしており、人件費を販売管理費として計上している為、売上原価が無く、売上高と売上高総利益が等しい値になっています。
- 営業利益
- 企業の本業による収益力を示す指標です。この指標には販売費及び一般管理費を考慮した実質的な収益が反映されています。
- 当期純利益
- 企業の最終的な利益を示す指標です。税金等を含むすべての収支を反映した数値となっています。
②収益性指標の詳細
画面中段には、損益計算書(PL)から算出される主要な収益性指標を配置しています。これらの指標は、貸借対照表(BS)が企業の資産・負債・純資産といった特定時点での状態を表すのに対し、一定期間における企業活動の収益性を示すものとなります。
- 売上高総利益率
- 売上高に対する売上総利益の割合を示しています。この指標により、企業が提供する製品やサービスの基本的な収益性を把握することができます。
- 今回はコンサルティング事業を例にしており、人件費を販売管理費として計上している為、売上原価が無く、売上高と売上高総利益が等しい値になっています。その為、この値にはあまり意味がありません。
- 営業利益率
- 売上高に対する営業利益の割合を表しています。これは企業の本質的な事業活動がどの程度効率的に行われているかを示す重要な指標となります。
- 当期純利益率
- 売上高に対する当期純利益の割合を示しています。この指標は、企業活動全体の最終的な収益性を表すものとなります。
③財務健全性指標
画面中段には、先ほどのPLから算出される収益性指標に加え、貸借対照表(BS)から算出される財務健全性指標を配置しています。BSは特定時点での企業の財政状態を表すものであり、以下の指標は企業の財務基盤の安定性を示す重要な指標となります。
- 流動比率
- これは流動負債に対する流動資産の割合です(流動資産/流動負債)。企業の短期的な支払能力を示すものであり、一般的に200%以上であることが望ましいとされています。
- 当座比率
- これは流動負債に対する当座資産の割合です(当座資産/流動負債)。これは流動比率よりもより厳密な支払能力を示す指標となっており、100%以上であることが一つの判断基準とされています。
- 自己資本比率
- これは総資本に対する自己資本の割合です(自己資本/総資本)。これは企業の財務の安全性を示す重要な指標となります。なお、この指標は業種によって適正水準が異なるため、業界平均値との比較による評価が特に重要となります。
④画面構成の工夫
経営判断に必要な情報を、以下のような構成で配置しています:
画面上段では重要指標を強調表示し、中段では主要な経営指標を配置しております。下段では、収益性指標として売上高および営業利益の推移をグラフ化し、併せて期首・期末における貸借対照表の状況を表示する構成としております。
PL分析ページ – 収益の状況を確認する
PL分析ページでは、収益構造を多角的に分析することが可能な構成としております。本ダッシュボードはコンサルティング企業様向けにカスタマイズしており、下部の詳細セクションでは、人件費および業務委託費等の主要コストを詳細に分析できる設計としております。
それでは、各構成要素について詳細にご説明いたします。
画面構成と分析ポイント
上段:主要指標
売上高や営業利益といった指標を大きく表示し、事業状況を即座に把握できるようにしています。
中段:時系列での分析
売上高、営業利益および営業利益率について、左側に単月実績、右側に累計実績を表示する構成としております。
下段:詳細分析
本ダッシュボードは、コンサルティング企業様を対象としているため、人的リソースに関する財務分析として、人件費、外注費、エージェント費用等の詳細な分析が可能な設計としております。
BS分析ページ – 資産の状況を確認する
BSの分析ページでは、各月のBSの状態を時系列で表示させています。
予実分析ページ – 主要カテゴリの予実の達成状況を確認する
Tableauによる分析の主要な利点の一つとして、複数のデータソースを統合した分析が可能である点が挙げられます。本ダッシュボードでは、主要カテゴリについて予算と実績の比較分析を実施できる構成としております。具体的には、予算データを別システムからTableauに連携し、財務会計システムの実績データと統合した分析を実現しております。
それでは、各構成要素について詳細にご説明いたします。
主要カテゴリごとの分析ができるようにタブで分ける
主要カテゴリごとに分析ができるように、画面上部に、以下の要素でのタブを設けて、選択されたタブの計測値での予実分析をできるようにしております。
- 売上高
- 売上原価
- 売上総利益
- 販売管理費
- 営業利益以下の利益項目
詳細データページ – 一覧データの確認およびダウンロード
これまでは主にグラフによる可視化分析を中心にご説明してまいりました。しかしながら、実務においてはグラフによる分析のみならず、帳票出力やデータエクスポートの機能が不可欠となります。そのため、本ダッシュボードでは、前述の各指標についてPDF形式での出力機能およびCSV形式でのエクスポート機能を実装しております。これらはTableauの標準機能で実現可能ではありますが、ユーザビリティを考慮し、画面上に専用ボタンを配置することで、直感的な操作による出力を可能としております。
以上が、Praztoが提供する財務分析ダッシュボードの詳細となります。経営判断に必要な情報を、直感的かつ効率的に提供することで、お客様の意思決定をサポートいたします。ご興味を持たれた方は、ぜひお気軽にお問い合わせください。
また、本事例で構築したダッシュボードの詳細情報(画像を含む)は、弊社ポートフォリオページにてご覧いただけます。ご興味がございましたら、ぜひチェックしてみてください。Tableauを活用した業務改善の可能性について、より具体的にイメージしていただけると幸いです。