本記事では、「コールセンター向け/パフォーマンス分析ダッシュボード」の構築ストーリーをご紹介します。
急成長するビジネスにおいて、コールセンターの効率的な運営は重要な課題となっています。この記事では、架電履歴データを活用し、アポイント率やコール時間帯の分析を可能にするダッシュボードをご紹介いたします。
この記事を通じて、データ可視化がいかにして業務改善と意思決定の迅速化につながるかをご覧いただけると嬉しいです。
【課題】商材とメンバーの数が多くなってきたことにより管理ができなくなってしまった
コールセンター業務は、多くの企業にとって重要な顧客接点の一つです。新規顧客の開拓や既存顧客のフォローアップなど、ビジネスの成長に直結する重要な役割を担っています。しかし、事業規模の拡大に伴い、コールセンターの管理が複雑化し、効率的な運営が困難になるケースが少なくありません。
多くの企業は、コールセンター業務を小規模で開始します。初期段階では、商材の種類も限られており、メンバーの数も少ないため、各担当者の業務を細かく管理し、適切なフォローアップを行うことが比較的容易です。管理者は、各メンバーが顧客と接続しやすい時間帯に効率的に架電しているか、適切な準備を行っているか、そして実際に接続やアポイントにつながっているかを個別に確認し、必要に応じて指導することができます。
しかし、事業の成長に伴い、取り扱う商材の種類が増え、コールセンターのメンバー数も増加すると、状況は一変します。多くの企業が経験する典型的な課題として、以下のようなものが挙げられます:
- コール数、コンタクト数、アポイント数が人数の増加に比例して伸びない
- 各メンバーのパフォーマンスの把握が困難になる
- 効果的な時間帯や手法の特定が難しくなる
- 個別のフォローアップや指導が行き届かなくなる
具体的には、次のような状況が発生しがちです。一部のメンバーが、明らかに接続率の低い時間帯に架電を行っていたり、指示されたトークスクリプトを適切に活用できていなかったりするケースが増えてきます。これらは適切な管理とフォローアップがあれば容易に改善できる問題です。しかし、全体の状況をリアルタイムで把握することが難しくなるため、問題の早期発見と迅速な対応ができなくなってしまいます。
結果として、コールセンター全体のパフォーマンスが低下し、期待される成果が得られなくなってしまうのです。この状況を打開するためには、データを活用した効率的な管理システムの導入が不可欠となります。
【解決アプローチ】架電データを分析し、Tableauダッシュボードでパフォーマンスの低下を早期に発見する
上記の課題を解決するための効果的なアプローチとして、データの可視化による迅速な状況把握が挙げられます。今回のケースではCTIツールやCRMが既に導入されており、すでに様々なデータが蓄積されていました。これらのデータを適切に活用することで、コールセンターの運営を大幅に改善することが可能です。
具体的に、以下のようなデータが利用可能でした:
- 目標データ
- 商材ごと、月毎のコール数、コンタクト数、アポイント数の目標値
- 担当者ごと、月毎のコール数、コンタクト数、アポイント数の目標値
- 架電データ
- 担当者情報
- 対象商材
- 使用したトークスクリプト
- 架電日時 接続の有無(コンタクトの成否)
- アポイントの獲得有無
- 通話の開始・終了時刻
- 関連する商談データのID(アポイント獲得時)
- 商談データ
- 商談ID
- 商談の開始日と終了日(受注日または失注日)
- 商談金額
- 対象商材
- 担当コールセンターメンバー
これらのデータを適切に組み合わせることで、以下のような重要な指標を導き出すことができます:
- コール数、コンタクト数、アポイント数
- コンタクト率(コール数に対するコンタクト数の比率)
- アポ率(コール数に対するアポイント数の比率)
- 平均架電時間
- 稼働時間全体に対する合計架電時間の比率(架電準備の効率性指標)
- 架電時間帯の分布(効果的な時間帯の特定)
- アポイントから獲得した商談の受注率や受注金額(質の高いアポイントの創出状況)
これらの指標をTableauを用いて自動集計し、視覚的に分かりやすく表示することで、コールセンターの現状を迅速かつ正確に把握することが可能になります。特に重要なのは、パフォーマンスの低い担当者を早期に特定し、適切なフォローアップを行うことです。これにより、個々の担当者のスキル向上とともに、コールセンター全体の生産性向上を図ることができます。
【設計】課題解決を実現するためのワイヤーフレーム構成
効果的なダッシュボードを設計するために、以下の3つのワイヤーフレームを基本構成としました。
①コール数、コンタクト数、アポイント数の予実結果のサマリー
このワイヤーフレームは、コールセンターの全体的なパフォーマンスを一目で把握できるように設計されています。画面上部には、コール数、コンタクト数、アポイント数などの達成状況を円グラフで表示し、直感的に理解できるようにしています。さらに、商材などでフィルタリングできる機能を追加し、様々な角度からパフォーマンスを分析できるようにしています。
②商材ごと、メンバーごとの詳細指標表示
このワイヤーフレームでは、より詳細なパフォーマンス指標を表示します。具体的には以下の指標を可視化します:
- コール数
- コンタクト率
- アポ率
- 平均通話時間
- 平均アイドルタイム
- 曜日/時間帯毎のコール数・コンタクト率・アポ率
- トークスクリプトごとのコール数・コンタクト率・アポ率
これらの指標を商材ごと、メンバーごとに表示することで、詳細なパフォーマンス分析が可能になります。特に注目すべき点は、コールセンターの成果が「コール数 × コンタクト率 × アポ率」で因数分解できるという点です。この考え方を基に、各要素の改善ポイントを特定し、効果的な施策を講じることができます。
③売上への貢献度の可視化
最後のワイヤーフレームでは、コールセンターの活動が実際の売上にどのように貢献しているかを可視化します。以下の指標などの売上に関する達成状況を表示します:
- 受注金額
- 受注数
- 平均単価
- アポ数
- コンタクト数
これらの指標を関連付けて表示することで、コールセンターの活動が最終的な事業成果にどのようにつながっているかを明確に把握することができます。
【Tableauダッシュボード】Tableauの柔軟性を最大限に活かしたグラフの使い方
Tableauの強みは、データを柔軟かつ直感的に可視化できる点にあります。この特性を活かし、各ワイヤーフレームに対して以下のような工夫を施しました。
①コール数、コンタクト数、アポイント数の予実結果のサマリー
この部分では、概要の表示と直接的な原因をどちらも表示するようにしています。画面上部では、円グラフと色を効果的に使用して全体の達成度合いを一目で把握できるようにしています。グリーンは目標達成、レッドは目標未達を示し、ユーザーは瞬時に全体状況を理解できます。
その直下には、個々のメンバーの貢献度を示す一覧を配置しています。各メンバーの実績をバーチャートで表示し、目標値との比較を可能にしています。ここでも同様の色分けを採用し、グリーンが目標達成、レッドが目標未達を表しています。この構成により、全体の達成状況とその要因となる個人のパフォーマンスを連動して分析することが可能となり、効率的な改善策の立案をサポートします。
②商材ごと、メンバーごとの詳細指標表示
このダッシュボードでは、以下の工夫を施しています:
- (左上)散布図:成績の悪いメンバーを異常値として視覚的に強調表示
- (左下)ヒートマップ:架電活動の集中度合いを時間帯別に表示
- (右上)折れ線グラフ:選択メンバーの日別の平均架電時間が全体の中でどのように位置しているかを表示
- (右下)トークスクリプトごとに、選択メンバーのコンタクト率やアポイント率がどれだけ平均と乖離しているかを示したグラフ
これらのグラフでの可視化により、パフォーマンスの傾向や問題点を素早く特定することが可能になります。
③売上への貢献度の可視化
このダッシュボードでは、以下の工夫を施しています:
- 円グラフと色による達成度合いの表示:コール数、コンタクト数、アポイント数の予実結果と同様の手法を用いて、直感的な理解を促進
- 因数分解した指標の掛け合わせの可視化:グラフの配置を工夫し、各指標の関係性を視覚的に表現
これにより、コールセンターの活動が最終的な売上にどのようにつながっているかを明確に把握することができます。
④ダッシュボード全体の構成
ダッシュボードの設計にあたっては、ユーザーの役割と情報ニーズに基づいた構成を心がけました。具体的には、大きく2つのセクションに分けています:
- 現場マネージャー向け:コンタクト数、アポ数、コンタクト率、アポ率などの日常的な運用指標を中心に配置しています。これらは日々の業務パフォーマンスを直接反映する重要な指標です。
- 上層部マネージメント向け:売上の達成状況や全体的なKPIを中心に構成しています。これにより、経営判断に必要な高レベルの情報を迅速に把握することが可能です。
この2層構造により、各ユーザーが必要とする情報に最小限の操作でアクセスできるようになりました。結果として、情報の即時性が向上し、より効率的な意思決定プロセスをサポートしています。
【まとめ:データ駆動型の運用プロセス】
本記事では、「コールセンター向けパフォーマンス分析ダッシュボード」の構築プロセスと、Tableauの特長を活かした工夫についてご紹介しました。
このダッシュボードの導入により、以下のような成果が得られました:
- パフォーマンスの低い担当者の早期特定と適切なフォローアップの実現
- PDCAサイクルの迅速化と効率化
- コールセンター全体の生産性向上
Tableauは、このようなデータ駆動型の意思決定プロセスを支援する上で極めて有効なツールだと考えています。Praztoでは、本事例に限らず、多様な業界や業務におけるTableauを活用したソリューションの提案と実装を行っています。
本事例で構築したダッシュボードの詳細情報(画像を含む)は、弊社ポートフォリオページにてご覧いただけます。ご興味がございましたら、ぜひチェックしてみてください。Tableauを活用した業務改善の可能性について、より具体的にイメージしていただけると幸いです。