【Tableau構築ストーリー】ルートセールスのための営業ルート分析ダッシュボード 〜マーケットデータと自社データを活用した地図ベースの販売シェア分析〜

2024.09.30

目次

    データ活用の重要性が高まる中、ルートセールスでもデータを活用した営業ルートの最適化が求められています。本記事では、マーケットデータと自社データを活用し、Tableauダッシュボードで自社販売シェアを地図上に可視化した事例を紹介します。この取り組みにより、ルート営業担当者が効率的な巡回ルートを設計し、販売パフォーマンスを向上させた過程を説明します。

     

    本記事では、「商圏別/販売ニーズ分析ダッシュボード」の構築過程を紹介します。ダッシュボードの詳細は、以下のページでもご覧いただけます。

    商圏別/販売ニーズ分析ダッシュボードはこちらから

     

    ①ダッシュボード構築前の現場が抱える課題とは

    効率的な訪問ルート選定は重要課題です。自社の販売情報はSalesforceで管理し、マーケットの販売データは外部から購入しています。これにより、自社の販売シェアや「マーケットの需要の大きさ」「自社の成長余地」などの計算は理論上可能です。しかし、日々の業務の中で、この膨大なデータをエリアごとにタイムリーに分析できるかどうかとなると別問題です。

    データ量の膨大さによる分析の困難さ

    分析に必要なデータは多岐にわたります。自社の販売データに加え、市場全体の動向を把握するためのマーケットデータも不可欠です。これらのデータは市場データ販売会社から購入可能ですが、その量は膨大です。そのため、手作業での分析は時間がかかり過ぎ、詳細な分析が困難な状況でした。

    組織変更に伴うデータ管理の複雑化

    担当者の異動や営業領域の変更は、ビジネスにおいて定期的に発生します。しかし、これらの変更がデータ管理を複雑にし、正確な実績評価を困難にしていました。例えば、ある営業担当者が担当エリアを変更した場合、過去の実績データと新しいエリアのデータを適切に紐づけて分析することが難しくなっていました。

    小規模商圏データの管理と分析の煩雑さ

    特に小規模な商圏や個別の店舗ごとの販売データや実績の管理が煩雑になっていました。これにより、特定のエリアや店舗ごとのパフォーマンスを正確に分析することが困難でした。結果として、ピンポイントでの営業戦略の立案や、効果的なリソース配分が阻害されていました。

    データの分断による全体像の把握の困難さ

    自社の販売データとマーケットデータが別システムで管理されていたため、データ統合が困難でした。これにより、自社のパフォーマンス把握と効果的な戦略立案が阻害されていました。

    これらのルートセールスの効率低下に関する課題は、事業および組織の拡大に伴いさらに顕著になります。今後の事業拡大を見据え、早急に解決すべき重要課題でした。

    ②ダッシュボード導入で実現する解決策

    これらの課題解決のため、Tableauを用いたダッシュボードを導入しました。このダッシュボードは、以下の解決策の実現を目的としています。

    データの自動集計と地図上への可視化

    膨大なデータを自動的に集計し、地図上に可視化することで、直感的にデータを理解し、迅速な意思決定を可能にします。このシステムは以下のデータを活用します:

    • 自社の販売データ:Salesforceで管理されているSKU単位の販売データ
    • マーケットの販売データ:市場データ提供会社から購入したSKU単位のデータ

     

    これらのデータを統合することで、以下の分析が店舗や商圏別に可能になります:

    • 自社商品の売上高
    • 他社商品を含む総売上高
    • 自社の売上シェア(自社商品の売上高 / 他社商品を含む総売上高)

     

    また、地図を使用して分析できるようにすることで、小規模な商圏や個別の店舗ごとのデータを詳細に分析できるようにします。これにより、ピンポイントでの営業戦略の立案や、効果的なリソース配分が可能になります。

    データ集計処理の自動化

    データの集計処理を自動化することで、人的ミスを減らし、データ分析にかかる時間を大幅に削減します。これにより、営業担当者はデータ処理ではなく、戦略立案や顧客対応などの本質的な業務に集中できるようになります。

    自社の販売データとマーケットデータを統合して分析することで、市場全体における自社のポジションを明確に把握できるようにします。これにより、より戦略的な意思決定が可能になります。

    過去データの管理と分析

    担当者ごとの実績を正確に評価するため、過去のデータを適切に管理し、分析できるようにします。組織変更や担当者の異動があっても、過去の実績データを正確に追跡し、公平な評価を可能にします。 

     

    これらの解決策を実現するためのダッシュボード構築にあたっては、様々な工夫が必要でした。次のセクションでは、その具体的な内容について説明します。

    ③Tableauダッシュボードを活用してどのように解決したか

    ダッシュボード構築時、大量データの処理と地図上の可視化に工夫を要しました。

    自動でのデータ処理(Salesforce→DWH、Amazon S3→DWH)

    膨大なデータ、特にマーケット販売データを効率的に処理するため、以下のように自動でデータを集計するシステムを構築しました。これにより、人手をかけることなく、大量のデータを自動的に集計・分析できるようになりました。

    • Salesforceデータの連携:ETLサービスを使用して、SalesforceのデータをBigQueryに自動的に連携させます。
    • マーケットデータの連携:購入したマーケットデータをAmazon S3に配置し、バッチ処理でBigQueryに連携させます。

    組織変更前のデータを遡って確認できるようにスナップショットを保存する

    「組織変更や担当者の異動時に過去の実績データを正確に追跡できない」という課題に対し、次の対策を講じました:

    • スナップショット保存:定期的にデータのスナップショットを保存し、任意の時点のデータを再現可能にしました。
    • 履歴管理:担当者の異動や組織変更の履歴を管理し、過去の営業実績を正確に反映するシステムを構築しました。

    これらの施策により、組織変更後も過去の実績を正確に評価できるようになりました。

    Tableauダッシュボードの柔軟性を活かしたユーザビリティの向上

    現場で必要な指標が多岐にわたり、それらを地図上に表示する必要があるため、Tableauダッシュボードには高度な可視化の柔軟性と品質が求められました。これらの要求に応えるため、以下のようなダッシュボードを構築しました。

    地図上に商圏情報をプロットしました。円の大きさでマーケットニーズを、色で自社の販売シェアを表現しています。青色は自社の販売シェアが基準値以上、赤色に近いほど基準値未満を示します。これにより、「円が大きく赤に近いほど、営業効果の高い商圏」と視覚的に判断できます。

    商圏一覧を散布図で表示しました。販売売上高などの実数と販売シェアなどの割合といった複数の異なる指標を用い、商圏ごとの特性や分類を視覚的に把握できるようにしました。

    さらに、多数の指標を扱うため、ユーザーがX軸とY軸を自由に選択できる機能を実装しました。これにより、1つのグラフでさまざまな2軸分析が可能になりました。

    各グラフ間で店舗や商圏の選択が連動するよう設計し、探索的分析を可能にしました。例えば、地図ダッシュボードで”投げ縄”機能を使用して範囲指定すると、連動して散布図と店舗一覧が更新されます。これにより、地図上で視覚的に確認しながら絞り込みを行い、選択された店舗群の特性をすぐに分析できます。

    ダッシュボードの全体図です。ユーザーの分析と絞り込みを容易にするため、レイアウトと配色を最適化しました。

    ④まとめ

    Tableauダッシュボードの導入により、ルートセールス業務が大きく変わりました。リアルタイムでのデータ可視化、詳細な分析、効率的なデータ管理が実現され、営業活動の効率と効果が大幅に向上されました。

    このダッシュボードは単なるデータ表示ツールではなく、営業戦略を支える重要な意思決定支援システムとして機能しています。また、営業現場から経営層まで共通のダッシュボードを用いてコミュニケーションを取れる点も大きな利点です。これらによりデータドリブンな組織文化の醸成に貢献しています。

    本事例が、ルートセールスのデジタル化における参考例となればとても嬉しいです。

     

    ダッシュボードの詳細は、以下のページでもご覧いただけます。ぜひご覧ください。

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