本日、Praztoは2つの発表をしました。AI名寄せ・顧客データ統合クラウド「NAYOSEL(ナヨセル)」の正式リリースと、プロフェッショナルサービス「データクレンジング支援 powered by NAYOSEL」の提供開始です。製品とサービスをなぜ同じ日に出すのか。この記事では、プレスリリースには書ききれなかった「2つが同時である理由」——つまり、Praztoという会社の事業構造の話をします。
同じ顧客が、システムごとに「別人」になっている
Praztoはこれまで、350社以上の企業のデータ連携・分析基盤の構築を支援してきました。業種も規模もさまざまですが、データの現場に深く入るほど、必ず同じ光景に出会います。同じ会社が、システムの数だけ「別人」として登録されているのです。
SFAには「株式会社山田製作所」、MAには「㈱山田製作所」、会計システムには「ヤマダ製作所」。人が入力し、名刺を取り込み、フォームから流れ込むたびに、重複は静かに増えていきます。1件1件は些細な表記の揺れですが、蓄積された重複は営業の重複アプローチを生み、顧客数を水増しし、集計の分母を狂わせます。

接続だけでは、解決しなかった
Praztoはこの数年、Agentic ETL「Passwork」で企業のデータをつなぐ仕事をしてきました。SFA・MA・会計・POS・データベース——バラバラの場所にあるデータを、ノーコードで確実に運ぶ。接続の数だけ現場の手作業が消え、この基盤は350社以上の実務で磨かれてきました。
そしてもうひとつ、Praztoの現場仕事の柱がTableauによるBI・ダッシュボードの導入支援です。数多くの企業のダッシュボードを構築するなかで、私たちは何度も同じ相談を受けてきました「ダッシュボードの数字が、現場の肌感と合わない」。
調べると、原因はグラフでも計算式でもなく、その奥にいる重複した顧客データでした。1社が3レコードに割れていれば、顧客数は3倍に数えられ、商談は分散し、売上もLTVも希釈されます。ダッシュボードは正しく動いている。違うのは、元のデータのほうなのです。
つまり、接続(ETL)と可視化(BI)の仕事を深くやればやるほど、その間に横たわる「正しさ」の問題——重複と表記揺れ——に突き当たる。これがPraztoの現場が10年近くかけてたどり着いた結論でした。データは、つないだだけでは正しくならない。
重複データの問題は「気合いで直す」ものとして各社の現場に放置されてきました。検出するツールはあっても、統合を実行し、商談や履歴を付け替え、元のシステムに書き戻すところまでやり切る道具が存在しなかったからです。
だから、名寄せ専用の製品を建てた——NAYOSEL
実は、Praztoにとって名寄せは新しいテーマではありません。私たちはこれまで、Salesforce上の重複統合製品「Mergency(マージェンシー)」を提供し、リードや取引先の統合を支援してきました。数十万件規模の重複統合を現場で回してきた製品です。ただし、MergencyはSalesforceの内側に閉じた道具でした。SFAの外——MA・会計・POS・データベースに散らばった同じ顧客の「別人」たちには、手が届きませんでした。
状況を変えたのはAIです。第一に、開発の生産性が桁で上がり、かつては現実的でなかった「サービスを横断する統合エンジン」を建てられるようになりました。第二に、自然言語から重複条件を指定できるようになりました。「会社名の表記揺れを吸収して、電話番号が同じレコードを候補に」——日本語で書けば、AIが判定条件に変換する。SQLを書けない業務部門が、自分たちで判定ルールを設計できるということです。Mergencyで磨いた統合の知見を、この2つの変化に載せてSalesforceの外へ拡張する。クロスサービスの名寄せ——それがNAYOSELの出発点です。
NAYOSELは、この「検出で終わる名寄せ」を終わらせるための製品です。AIが表記揺れの正規化ルールと重複判定条件の叩き台をつくり、判断が割れる組は承認キューで人が1件ずつ確定する。統合は商談・活動履歴の付け替えまで含めて実行し、Salesforce・RDBMSへ書き戻すところまでやり切ります。実行前には全レコードのスナップショットを自動取得するので、必ず戻せます。
ここで、事業構造の話になります。NAYOSELの「取り込み」は、Passworkのコネクタ基盤の上に建っています。SFA・MA・会計・POS・データベースなど69サービスからの取り込みが初日から使えるのは、350社の実務で叩かれ続けた接続基盤をそのまま継承しているからです。ゼロから作った名寄せツールには、この足腰はありません。NAYOSELは、Passworkがあるからこそ成立する製品です。
製品だけでも、解決しない——データクレンジング支援
ただし、私たちは製品を出すだけでは不十分だと考えました。長年蓄積した重複データの「初回の大掃除」には、道具に加えて、判断の設計と伴走が要ります。どの項目を突合キーにするか。どちらを勝ちレコードとして残すか。どこまでを自動で統合し、どこから人が承認するか——ここを見誤ると、道具があっても名寄せは頓挫します。
そこで同時に始めるのが「データクレンジング支援 powered by NAYOSEL」です。特徴は2つあります。第一に、診断なしの受注はしないこと。まず現状のデータを取り込み、重複率・表記揺れの分布を全件実測してから、その診断結果にもとづいてお見積りを提示します。第二に、料金の根拠を工数ではなく実測した件数に置くこと。従来のクレンジング業務は「人月」で見積もられ、発注側は作業総量が見えないまま契約せざるを得ませんでした。NAYOSELというエンジンがあるからこそ、この構造を変えられます。正規化も突合も統合も機械が実行し、人は判断に集中する。だから件数で価格が決められるのです。
これは「プロダクトの会社になったので現場仕事をやめます」という話の、正反対です。Praztoはプロダクトと現場支援の両方を続けます。ただし現場支援のかたちを、人月の労働集約から、製品を核にした成果ベースのプロフェッショナルサービスへ進化させます。
現場が製品を磨き、製品が現場を変える

ここまでを一枚にすると、Praztoの事業はこういう循環になっています。
現場支援が課題を発見し、課題が製品を生み、製品が現場支援を速く・安く・正確に変え、変わった現場支援がまた次の課題を連れてくる。シナジーは一方向ではありません。350社の現場がなければNAYOSELは生まれず、NAYOSELがなければ診断前置き・件数価格のクレンジング支援は成立しない。そして、このサービスで出会う現場の実データが、次のNAYOSELを磨きます。8月24日に製品とサービスを同時に出すのは、この循環を最初から完全な形で回し始めるためです。
2026年8月24日、同時提供開始
| NAYOSEL(ナヨセル) | データクレンジング支援 | |
|---|---|---|
| なにか | AI名寄せ・顧客データ統合クラウド | 初回の”データ大掃除”を請け負うプロフェッショナルサービス |
| かたち | 月額5万円からの4プラン | 診断のうえ、名寄せ対象の件数ベースでお見積り |
| 向いている方 | 重複の検出から統合・書き戻しまでを自社の仕組みにしたい | CRM移行・システム統合を控え、まず溜まった重複を一括解消したい |
| 詳細 | https://nayosel.prazto.com | https://prazto.com/data-cleansing |
まとめ——データを整え、保ち、AIに使わせる
AIの時代に企業データに起きることは、はっきりしています。AIエージェントが業務データを直接参照し、判断し、動く。そのとき重複した顧客データは、人間なら気づけた違和感ごとAIを狂わせます。AI活用の土台は、正しいデータです。
Praztoは「データを整え、保ち、AIに使わせる」会社として、つなぐ(Passwork)、揃える(NAYOSEL)、そしてやり切る(データクレンジング支援)を一つの構造で提供していきます。接続の次は、正しさ。私たちの次の10年は、この一行から始まります。

