2012年の創業以来、ファクタリング業界のパイオニアとして法人・個人事業主の資金繰りをサポートしてきた株式会社ビートレーディング様。同社では近年、事業拡大に伴う業務の複雑化や属人化が課題となっていました。
今回Praztoでは、サービス全体のDX化推進、業務の標準化・自動化による効率向上を目的として、同社のSalesforce×Herokuによる包括的なシステム構築を支援させていただきました。
どのような課題から始まり、システム導入によってどのような変革と成果を実現されたのか。プロジェクトの全容について詳しくお話を伺いました。

株式会社ビートレーディング 情報システム部 プロジェクトリーダー
大学卒業後、ネットワークエンジニアとして大規模なネットワークインフラの設計、開発、保守運用を行う。
2021年、株式会社ビートレーディングに入社。社長秘書として秘書業務に従事し、2023年からは情報システム部に配属。社内DX推進のプロジェクトのリーダーとして、会計・人事労務システムの導入やセールスフォースを通じた新たなサービス展開の実施などデジタル技術を用いた業務改善に取り組む。

株式会社Prazto 代表取締役
早稲田大学卒業後、SIerでエンジニアとしてキャリアをスタート。その後、外資系マーケティング会社、Salesforceゴールドパートナー企業と、3社での経験を通じて一貫してエンジニアリング技術を磨き、多くの顧客の課題解決に従事。2019年、Salesforceを中心とした導入支援・開発事業を行う株式会社Praztoを創業。2022年にSalesforceパートナーのルーキー企業として最優秀賞「Emerging Partner of the Year – Consulting –」を受賞し、創業4年で年商3.7億円にまで事業を成長させる。2025年、顧客への付加価値をさらに高めるため、データ連携サービス「Passwork」の事業を開始。「Technology and Design are True」というビジョンのもと、最適なシステムを提供するプロフェッショナルチームを統率している。

株式会社Prazto COO
大学卒業後、美容クリニックで受付カウンセラー職としてカウンセリング業務に従事。BtoBの経験を積むためサービスオフィス総合受付/秘書に転職し、入居企業様のサポートに従事。2022年9月、株式会社Praztoの教育事業への理念に共感して、SalesforceコンサルタントとしてPraztoに入社。現在は、株式会社PraztoのCOO/教育事業統括として教育事業の立ち上げと拡大を統括しながら、自らもSalesforceのトレーナーとして教育事業の実務も行う。
スピード重視のファクタリング事業でDX推進の必要性が高まる
芳賀:まず、御社の事業内容と現在力を入れていらっしゃる取り組みについて教えてください。
石本:弊社は、資金繰りに課題を抱える中小企業様や個人事業主様に向けて、ファクタリング事業を展開しています。スピーディで柔軟な資金調達サービスを提供することが、弊社の一番の強みだと考えております。
ここ数年は、サービス全体のDX化に積極的に取り組んでまいりました。現在は、そこで構築した仕組みをより実務に即した形で活用し、最適化を図ることに注力している段階です。
また、業務の属人化をなくし、誰が対応しても同じ品質で運用できるよう、運用フローの標準化や自動化のブラッシュアップを進めています。こうした取り組みにより、社内の業務効率向上はもちろん、お客様への提供価値のさらなる向上も目指しています。
属人的業務と手動処理による課題が深刻化
芳賀:DX推進に取り組まれた背景にはどのような要因があったのでしょうか?
石本:弊社では以前からSalesforceを活用しておりましたが、業務全体としては依然アナログな作業が多く残っていました。加えて、近年ファクタリング業界全体でもDX化の流れが加速しており、そうした市場の変化に的確に対応していくことも、会社として不可欠な課題でした。

芳賀:具体的にはどのような課題を抱えていらっしゃったのでしょうか?
石本:これまでの業務は、特定の担当者に処理が集中したり、担当者によって業務品質にばらつきが生じたりと、属人的な体制になっていた部分が多くありました。退職や人事異動があった場合、業務が滞ってしまうリスクを抱えていたのが実情です。
例えば、1件ずつの振込処理や入金確認、お客様へのご連絡も基本的には手動で対応しており、現場の負担が大きく、ミスが起こりやすい運用体制でした。
芳賀:振込処理について、もう少し詳しく教えてください。
石本:基本的には営業から振込用紙を紙でもらい、その用紙をもとにインターネットバンキングにログインして、手動で1件ずつ振り込みを行っていました。
月末などは1日に何百件という数を振り込みますので、本当に一日中その作業に拘束されるような状態でした。
芳賀:入金確認についてはいかがでしたか?
石本:入金確認は、銀行の口座を確認して、振り込みのあった口座名義をSalesforceで検索し、1件ずつ突合するという流れで、非常に手間がかかっていました。月末は張り付きっぱなしで、入金があるたびに確認作業を行っていました。入金が確認されないと次の契約実行ができないため、営業からも催促されるという状況でした。

今後の企業成長や組織拡大を見据えるうえでも、人が変わっても安定して回る仕組みづくり、つまり自動化による標準化・業務設計の再構築が必要だと強く感じていました。
こうした状況を抜本的に改善し、業務の効率化とサービス品質の向上を同時に実現するために、DXの本格導入に踏み切りました。
Salesforce×Herokuで業務全体の自動化と標準化を実現
芳賀:Herokuを導入された経緯について教えてください。
石本:元々Salesforceで顧客管理を行っていたことから、それを最大限に活かす形で、お客様自身が必要な手続きをオンラインで完結できるポータルサイトの構築を目指しました。
Herokuを選択した理由は、Salesforceとの親和性が非常に高く、既存の顧客データや業務フローを活かしつつ、柔軟かつ自由度の高いUI/UX設計が可能だったことです。また、弊社独自の運用フローにも柔軟に対応できるカスタマイズ性の高さも、大きな決め手となりました。

石本:今回構築したシステムでは、Herokuポータルでの顧客接点のデジタル化から、振込や入金確認の自動化まで、総合的なDX化を実現しています。Salesforceのデータとの双方向連携により、シームレスな業務フローを構築できました。
この導入によって目指したのは、お問合せからお振込・入金確認までの一連のプロセスを自動化し、工数削減とミスの防止、そしてお客様にとっての利便性向上を同時に実現することでした。
顧客ポータル構築で新規顧客層の開拓に成功

芳賀:顧客ポータルサイト構築の事業としての狙いについて教えてください。
石本:お客様のお問い合わせからお振込みまでの一連のプロセスを、一つのサイト内で完結させることを目指しました。これにより、お客様のサービス満足度向上を図ることができると考えています。
芳賀:実際に構築された効果はいかがでしたか?
石本:これまでお問い合わせをいただけなかったお客様からのご連絡が、ポータル経由で非常に増加しています。従来は直接お電話でのお問い合わせがほとんどでしたが、ポータルサイトをご利用いただくお客様は基本的にお電話不要で手続きが完結します。そのため、対面でのやり取りを避けたいというニーズをお持ちの方々との接点を持つことができ、お問い合わせ数が大幅に増加しました。

実際にポータルサイト経由での成約も多く生まれており、これまで接点を持てなかった新たな顧客層の開拓につながっていると実感しています。
振込処理・入金確認の完全自動化でミス削減と効率化を達成
芳賀:振込処理・入金確認の自動化を行った後、どのように変化しましたか?
石本:振込に関しては、審査申し込みから審査可決、本人確認完了まで長くとも2時間以内で完了する想定で運用しています。その間に契約書を作成し、締結から振込まで全て自動化されているため、タイムラグはほぼありません。
自動振込が実装されたことで、Salesforceのデータをもとに振込を行うため、振込ミスはほとんど発生しなくなりました。ボタンを押すだけで振込が完了するようになったので、心理的な負担も軽減され、時間も大幅に短縮されました。
芳賀:V-ONEクラウドによる入金消込の自動化についてはいかがでしょうか?
石本:完全一致しない振込情報とお客様情報であっても、V-ONEクラウドの学習機能が手動での突合処理を記憶してくれるため、時間が経過するほど精度が向上するのが非常に助かっています。
そして、その消込結果がAPIによりSalesforceに自動的に反映されるため、回収業務についても大幅に効率化されたことを実感しています。

業務理解・技術力・提案力の総合的な観点で弊社を選定
芳賀:弊社を選定いただいた決め手について教えてください。
石本:一言で言うと、理解力と提案力です。弊社の複雑な業務フローを短期間で深く把握いただき、SalesforceとHerokuの活用方法を的確に提案していただきました。
特に印象的だったのは、単にシステム導入の枠にとどまらず、業務全体をどう改善していくべきかという視点でご提案をいただけたことです。また、既存環境との親和性や今後の拡張性も踏まえた構成案を提示していただいたのも大きなポイントでした。

芳賀:構築の過程で苦労された点はありましたか?
石本:今回の構築で一番苦労したのは、既存業務との整合性です。今ある運用をどう無理なく新しいシステムに馴染ませるかという点で最も悩みました。根付いたフローを一気にシステム化すると、どうしても現場に抵抗感が生まれてしまいます。
また、業務内容に複雑な部分もあったため、単純に機能を置き換えるだけではうまくいかず、現場の声を拾いながら段階的に機能を導入していきました。多くの部署の業務を考慮してバランスを取りながら進める必要がありました。
そうした中で、Prazto様には業務理解のフェーズからしっかり関わっていただき、単なるシステム導入ではなく業務全体を考慮しながら携わってくれたことが、非常に心強かったです。

当初の課題解消と組織変革の実現
芳賀:当初の課題は解消されましたでしょうか?
石本:弊社では、これまで業務の多くが人手に頼る運用で成り立っており、振込処理や顧客対応のフローにおいても、担当者が情報を確認しながら逐一手動で対応することが多々ありました。その結果、ミスが起こりやすく、業務全体としても非効率な状態が続いていました。
今回のDX化により、こうした一連のプロセスが自動化され、業務フローが大幅に効率化されました。特に自動振込の仕組みを導入できたことは大きな変化で、処理の迅速化と同時に担当者の負担軽減にもつながっています。
芳賀:組織面での変化もあったとお聞きしています。
石本:今回の取り組みを通じて、システムに対する社内の理解や意識も大きく変わりました。現場に寄り添った形でプロジェクトを進めていただいたことで、社員のITリテラシーが自然と向上し、今では機能改善のアイデアが現場から出てくるような前向きな姿勢も見られるようになりました。
芳賀:Praztoへの評価をお聞かせください。
石本:技術面だけでなく業務面の理解においても非常に高いレベルでご支援いただきました。単なる開発ベンダーではなく、弊社の業務フローや業界特性に深く踏み込んだうえで、何をシステム化すれば現場が本当に楽になるかを一緒に考えていただけたことが、非常に印象に残っています。
今後も長期的なパートナーとして、より深い関係を築いていければと考えています。