昨今、さまざまな業界でパートナービジネスの重要性が高まる中、いかに効果的にパートナー企業とのエンゲージメントを高めていくかが大きな課題となっています。当社においても、お客様へのサービス提供方法として直接的なご支援と他社様との協業によるご支援を行う中で、パートナーシップの強化を実現するためTableau Embedded Analytics ライセンスを活用したパートナーポータルを構築しました。本記事では、WordPressとTableauの連携におけるSSOの実装方法など、技術的な側面を中心に、その具体的な実装方法と活用事例をご紹介します。
Tableau Embedded Analytics ライセンスとは?自社データを外部に見せる埋め込みTableauダッシュボードの活用方法
皆さんは、Tableau Embedded Analytics というライセンス形態をご存知でしょうか?
データ分析・可視化ツールとして広く活用されているTableauですが、通常のライセンスは自社内でのデータ活用を想定したものとなっています。つまり、自社で購入したTableauライセンスを使用して、社内のデータを社員が閲覧・分析するという使用方法が一般的です。
しかし、デジタルトランスフォーメーション(DX)が進む中で、自社のデータを取引先やパートナー企業と共有したい、あるいはお客様に分析結果を提供したいというニーズが高まっています。このような社外へのデータ共有のニーズに応えるのが、Tableau Embedded Analytics ライセンスです。
Tableau Embedded Analytics ライセンスの活用事例として最も多いのが、ビジネスパートナーに対してのポータルでの情報共有です。
パートナー企業との協業において最も重要なのは、互いの状況を正確に把握し、適切なアクションにつなげることです。この活用例として、Tableau社の公開事例でも紹介されているOcado Retail社の事例が参考になります。
Ocado Retail社では、サプライヤー企業向けに自社のデータを公開する仕組みを構築しています。各サプライヤーは、部門ごとにカスタマイズされたダッシュボードスイートにアクセスすることができ、それぞれのビジネスニーズに応じた最適なデータパッケージを柔軟に活用することが可能となっています。
当社が構築するパートナーポータルのご紹介。マーケティング上の位置付けと役割とは。
ここからは、当社Praztoのポータル活用事例についてご紹介いたします。まずビジネス面での活用方針をご説明し、その後、具体的な技術実装についても詳しくご紹介させていただきます。
Praztoでは、お客様へのサービス提供方法として、大きく2つのアプローチを採用しています。1つは直接的なご支援、もう1つは他社様との協業によるご支援です。特に近年は、後者の協業ビジネスの拡大に注力しており、より効果的なパートナーシップの構築を推進しています。
このパートナーシップの戦略において、当社では協業の深度に応じて、マーケティング施策を体系的に展開しています。具体的には、「認知獲得から想起促進まで」のファーストフェーズと、「具体的な検討促進」のセカンドフェーズの2段階で展開しています。
ファーストフェーズでは、インサイドセールス活動を軸に、コンテンツマーケティングや顧客事例のSNS・メールマガジン展開を実施しています。特に「Salesforce × システムインテグレーション」と「Tableau導入支援」の2つの領域における認知度向上と、優先的な想起の獲得を目指しています。本稿では本題から外れるため、詳細は割愛させていただきます。
セカンドフェーズが本稿の主題となります。具体的な検討段階に入られたパートナー様に対しては、認知獲得とは異なるアプローチで、当社の具体的な構築方法や費用感、実施体制、さらには今後の契約フローなど、より実務的な情報提供を行っています。
この情報提供をより効果的に実施するプラットフォームとして、パートナーポータルを構築し、試験的に運用を行い、大変好評を頂いております。以下、その具体的な内容についてご紹介いたします。
【パートナーポータルの紹介資料から抜粋】
SAMLによるSSOを活用した自動ログイン設定
パートナーポータルの構築にあたり、ユーザー体験を最大限に高めるため、シングルサインオン(SSO)による認証基盤を実装しています。このシステム構成について、詳しくご説明いたします。
当社のWebサイトではWordPressを採用しており、豊富なサードパーティ製アドオンを活用することで、高度な機能を効率的に実装することが可能です。WordPressを選択した主な理由の一つは、このような優れた拡張性にあります。同様に、Tableauも様々なサードパーティ製品との連携が容易で、充実したAPIやインテグレーション機能を備えています。
この両者の特性を活かし、当社ではWordPressのプラグインとしてminiOrangeが提供するSAML認証機能を採用しています。これにより、WordPressをSAML IdP(Identity Provider)として構成し、TableauをSAML SP(Service Provider)として連携させることが可能となりました。特筆すべきは、これらの実装がノーコードで完結する点です。
認証の具体的なフローは以下の通りです:
ユーザーがパートナーポータルにアクセスすると、WordPressによる認証が実行されます。SAML認証による統合により、Tableauへの追加のログインは不要となり、ユーザーにとっては単一のログイン操作として認識されます。これにより、ストレスフリーなユーザー体験を実現しています。
それでは、具体的な設定手順についてご説明いたします。
①WordPress側(IdP)の設定
②Tableau側(SP)の設定
以上で、SAMLによるSSO設定は完了となります。SAML認証が標準化された規格であるため、設定ファイルの受け渡しのみで容易に連携を実現することが可能です。
実際の画面動作
ここまでで、WebサイトとTableauのSSO連携の設定は完了となりました。それでは、実際の画面遷移と動作についてご紹介いたします。
まとめ:パートナーポータルがもたらす価値
以上、Tableau Embedded Analytics ライセンスとSSOを組み合わせたパートナーポータルの構築事例についてご紹介いたしました。
今回は当社のビジネスパートナー向け協業促進という特徴的な活用事例をご紹介しましたが、この構成は以下のような一般的なユースケースにも応用可能です。
- 製造業界における、サプライヤー向けの製品詳細情報や営業情報の提供
- 不動産業界における、販売代理店や仲介業者向けの物件情報の提供
近年、データの連携や収集、そしてDWHへの蓄積が飛躍的に容易になってきています。このような環境下において、Tableau Embedded Analyticsを活用したデータの業務活用は、今後さらに加速していくことが予想されます。本事例が皆様のビジネスにおける新たな可能性の検討材料となれば幸いです。
本ソリューションの詳細について、さらに詳しい情報をご希望の方は、お気軽にお問い合わせください。